人が育たない原因は、社員のやる気だけではありません。教え方が会社任せ、人任せになっていないかを見直すことが大切です。
中小企業では、社員教育がどうしても後回しになりがちです。
社長も現場も忙しい。
教える時間がない。
マニュアルを作る余裕もない。
そのため、入社した社員に対して、ついこう言ってしまいます。
「まずは見て覚えて」
「分からなければ聞いて」
「やりながら覚えて」
もちろん、仕事は実際にやってみないと覚えられません。
現場で経験することは大切です。
しかし、「見て覚えて」だけでは、人が育ちにくくなっています。
理由は簡単です。
何を見ればよいのか、本人には分からないからです。
ベテラン社員は、当たり前のように動いています。
しかし、その当たり前の中には、多くの判断があります。
どの順番で進めるのか。
どこに注意するのか。
お客様に何を伝えるのか。
ミスが起きやすいところはどこか。
困ったときに誰へ相談するのか。
これらは、見ているだけでは分かりません。
教える側は「見れば分かる」と思います。
しかし、教わる側は「何が大事なのか分からない」と感じています。
このズレが続くと、社員は不安になります。
「ちゃんと教えてもらえない」
「何をすれば評価されるのか分からない」
「聞くと迷惑そうにされる」
こう感じると、社員はだんだん質問しなくなります。
そして、ミスが増えます。
最後には、自信をなくして辞めてしまうこともあります。
では、小さな会社では何から始めればよいのでしょうか。
最初から立派な教育制度を作る必要はありません。
まずは、仕事を小さく分けて見える化することです。
たとえば、入社1週間で覚えてほしいこと。
1か月でできるようになってほしいこと。
3か月後に任せたいこと。
これを簡単に書き出します。
次に、誰が何を教えるのかを決めます。
すべてを社長が教える必要はありません。
現場の先輩が教える部分、社長が伝える部分を分ければよいのです。
ただし、社長が必ず伝えるべきことがあります。
それは、会社の考え方です。
仕事の手順は先輩が教えられます。
しかし、会社が何を大切にしているのかは、社長の言葉で伝える必要があります。
お客様への姿勢。
報告の大切さ。
仲間との関わり方。
仕事で守ってほしい基準。
ここを伝えないまま、作業だけ教えても、会社に合う人材は育ちません。
また、教える側にも準備が必要です。
「何度も同じことを聞かれる」
「教えたのに覚えない」
「自分で考えてほしい」
こう感じることもあるでしょう。
しかし、教え方が人によって違えば、教わる側は混乱します。
Aさんはこう言った。
Bさんは違うことを言った。
社長はまた別のことを言った。
これでは、社員は迷います。
小さな会社ほど、教育の型を少しだけ決めておくことが大切です。
入社時に伝えること。
最初に覚える仕事。
質問してよい相手。
確認のタイミング。
試用期間中に見るポイント。
これらを決めるだけで、教育はずいぶん楽になります。
教育は、社員だけのためではありません。
社長と現場を守るための仕組みでもあります。
人が育たない会社は、いつまでも社長や一部のベテランに仕事が集中します。
人が育つ会社は、少しずつ任せられる仕事が増えます。
その違いは、教育を感覚に任せるか、仕組みにするかです。
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櫻井邦博