人数が少ない会社ほど、社長と社員の距離は近くなります。だからこそ、曖昧なままのルールが不満や誤解につながることがあります。
「うちは人数が少ないから、細かいルールは必要ない」
そう考える社長は少なくありません。
確かに、従業員が少ない会社では、社長と社員の距離が近く、顔を見ながら話ができます。困ったことがあれば、その場で相談できます。大企業のように分厚い規程を作る必要はないかもしれません。
しかし、小さな会社だからこそ、ルールを曖昧にしてはいけない部分があります。
理由は、距離が近いからこそ、感情の影響を受けやすいからです。
たとえば、有給休暇の取り方です。
Aさんは遠慮せずに休みを申請する。Bさんは周りに気を使ってなかなか休まない。社長は忙しそうな時期には休んでほしくないと思っている。
ルールが曖昧だと、休むこと自体が「言い出しにくいこと」になります。
本来、制度として認められているものであっても、職場の空気に左右されてしまいます。
また、残業についても同じです。
社長は「必要なときだけ残業してほしい」と思っている。社員は「残っていた方が頑張っているように見える」と思っている。別の社員は「早く帰ると評価が下がるのでは」と不安に思っている。
このような状態では、働き方が人によってバラバラになります。
そして、だんだん不満が出てきます。
「あの人はいつも早く帰る」
「自分ばかり負担が多い」
「社長は分かってくれていない」
小さな会社では、このような不満がすぐに職場全体へ広がります。
人数が少ない分、一人の不満が全体の空気に影響しやすいのです。
だからこそ、最低限のルールが必要です。
ここでいうルールとは、社員を縛るためのものではありません。
社員が安心して働くための共通の基準です。
何時から何時まで働くのか。
休みはどのように申請するのか。
残業は誰の指示で行うのか。
遅刻や欠勤の連絡はどうするのか。
会社として大切にしたい行動は何か。
守ってほしい最低限の約束は何か。
こうしたことが明確になるだけで、職場の迷いは減ります。
小さな会社では、社長の人柄がそのまま会社の雰囲気になります。
それは大きな強みです。
一方で、社長の考えが言葉になっていないと、社員は空気を読んで動くことになります。
「たぶん、こうした方がよいだろう」
「前の人はこうしていたから、自分もそうしよう」
「社長はこう思っているはずだ」
このような働き方は、一見うまくいっているように見えて、実は危ういものです。
なぜなら、社員ごとに受け取り方が違うからです。
社長の考えを正しく理解している社員もいれば、誤解している社員もいます。遠慮して聞けない社員もいます。自分に都合よく解釈する社員もいます。
その結果、社長の意図とは違う行動が増えていきます。
そして問題が起きたとき、社長はこう思います。
「そんなつもりではなかった」
「普通に考えれば分かるはず」
「前から言っていたのに」
しかし、社員からすると、こうです。
「聞いていません」
「そんなルールがあるとは知りません」
「人によって対応が違います」
このすれ違いを防ぐために、就業規則や社内ルールがあります。
小さな会社に必要なのは、難しい制度ではありません。
まずは、社長の考えを分かりやすく言葉にすることです。
そして、社員が見ても分かる形にすることです。
ルールがある会社は、冷たい会社ではありません。
むしろ、社員を大切にする会社ほど、働く基準をきちんと整えています。
なぜなら、社員に安心して働いてほしいからです。
櫻井邦博社会保険労務士事務所では、小さな会社に合った、実際に使えるルールづくりを大切にしています。
人数が少ない今だからこそ、会社の土台を整えるよい時期です。
「まだ早い」ではなく、問題が大きくなる前に整えておく。
それが、社長と社員の両方を守ることにつながります。
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櫻井邦博