採用の失敗は、面接で人を見抜けなかったことだけが原因ではありません。入社前に何を伝えるかで、定着率は大きく変わります。
採用は、会社にとって大きな決断です。
特に中小企業では、一人採用するだけでも大きな影響があります。良い人が入れば、会社の雰囲気が明るくなり、仕事の流れも良くなります。一方で、合わない人を採用してしまうと、社長も現場も大きな負担を抱えることになります。
「面接では良さそうだったのに」
「入社してみたら、思っていた人と違った」
「本人も、こんなはずではなかったと言って辞めてしまった」
このような経験をした社長も多いのではないでしょうか。
採用の失敗は、能力だけの問題ではありません。
多くの場合、入社前の情報共有が不足しています。
会社が求めていることと、応募者が期待していることがズレたまま入社してしまう。すると、入社後にお互いが違和感を持ちます。
では、採用で失敗しない会社は、入社前に何を伝えているのでしょうか。
まず一つ目は、仕事内容の現実です。
求人票では、どうしても良い面を中心に書きたくなります。もちろん、会社の魅力を伝えることは大切です。
しかし、良いことばかりを伝えて入社してもらっても、長続きしなければ意味がありません。
たとえば、繁忙期は忙しくなる。お客様対応で気を使う場面が多い。最初は地味な作業も多い。覚えることが多く、慣れるまでは大変である。
こうした現実も、入社前に伝えるべきです。
これは、応募者を不安にさせるためではありません。
入社後の「聞いていた話と違う」を防ぐためです。
大変なことも伝えたうえで、それでもこの仕事に挑戦したいと思える人は、定着しやすくなります。
二つ目は、会社が大切にしている考え方です。
同じ仕事でも、会社によって大切にしていることは違います。
スピードを重視する会社もあります。丁寧さを重視する会社もあります。お客様との関係性を大切にする会社もあります。チームワークを重視する会社もあります。
社長の中では当たり前でも、応募者には分かりません。
だからこそ、面接の段階で伝える必要があります。
「当社では、お客様への約束を守ることを大切にしています」
「分からないことをそのままにせず、早めに相談する人を評価します」
「一人で抱え込むより、チームで助け合う姿勢を重視しています」
このように伝えると、応募者も自分に合う会社かどうかを考えることができます。
三つ目は、働くうえでの基本ルールです。
勤務時間、休日、残業、休暇、給与、試用期間、評価の考え方。これらは、入社前にできるだけ分かりやすく伝えるべきです。
特に試用期間については、曖昧にしないことが大切です。
試用期間中に何を見ているのか。どのような姿勢を期待しているのか。会社として、どのように育てていくのか。
ここを伝えておくと、入社後の不安が減ります。
四つ目は、会社の課題です。
これは意外と大切です。
会社には必ず、まだ整っていない部分があります。
マニュアルが十分でない。教育体制をこれから整える段階である。人数が少ないため、一人が幅広い仕事を担当する必要がある。
こうした課題を隠して採用すると、入社後に不満につながります。
逆に、課題を正直に伝えたうえで、
「だからこそ、一緒に会社を良くしていきたい」
と伝えることができれば、前向きな人材に響きます。
採用は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を選ぶ場でもあります。
だからこそ、会社の良い面だけでなく、現実や期待も伝える必要があります。
入社前にきちんと伝える会社は、入社後のズレが少なくなります。ズレが少ない会社は、社員が定着しやすくなります。
採用で大切なのは、良く見せることではありません。
合う人に選ばれることです。
そのためには、社長の考え方、会社のルール、仕事の現実を言葉にしておく必要があります。
櫻井邦博社会保険労務士事務所では、採用後の定着まで見据えた仕組みづくりを支援しています。
求人票や面接だけでなく、入社時に何を伝えるか。
その準備が、採用の成功を左右します。
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櫻井邦博